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さらば青春の光の“伏線の誤訳”

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前回はジミー役の候補だったジョニー・ロットンと、ジミーのモデルになったオリジナル・モッド、アイリッシュ・ジャックの共通項を中心に書いてみましたが、今回は少し映画寄りのテーマである“伏線”について書いてみたいと思います。



◼ふく‐せん【伏線】
小説や戯曲などで、のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。また、その事柄。「主人公の行動に―を敷く」大辞泉より

例:「この戦争が終わったら○○と結婚するんだ」、「さようなら。君に会えて本当に良かった」等のセリフの後に死に至ったり絶望的な状況になることがある。wiki<フラグ>より




上の例のようなベタなものはクライシス系映画なんかでよくみられますね。個人的にはこの手のものよりも映画を2度、3度と繰り返し見ていくうちに、「あ、ここはそうだったのか」と気付くくらいの方が味があって好きです。その辺は個人で好みが別れるところだと思いますが、このように伏線とは物語が展開していく上での大きな鍵であり、その練り方次第で作品の出来が大きく変わってしまうほどの重要な役割を担っています。映画や小説でもこういった部分に注意して鑑賞すると鑑賞後の印象や感想は随分と変わってきますね。



当然、この物語でも幾つかの伏線が存在します。
まず挙げられるのがこちら。ジミーがピートのドラッグの入手先を聞きにスクーターに乗って出発するシーン。
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出発するジミーに向かってスクラップ車が画面左から突進する形で不自然に飛び出してきます。観ている側は一瞬冷やっとするのですが、画面奥のジミーと手前のスクラップ車が衝突することはありません。あえてこのような見せ方をしたのは、その後に起こるジミーのスクーターが郵便配達車に惹かれる場面(下写真)を暗示させているからでしょうか。
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そして、今回一番驚いたのがこちら。
ロッカーズの旧友ケビンとの会話の中で、モッズについて語るジミー。

ケビン
"モッズもロッカーズも関係ないよ"
"同じことだ"

ジミー
"俺は人と同じなんて真っ平だね"
"だからモッズさ"
"大物になりたいんだ"
"でなきゃ死ぬ方がましだ"

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最後の「死ぬ方がましだ」に差し掛かった時、思わず再生を止めました。英語が苦手な私でさえ「jump in the sea ~ 」と聞きとることができました。重要な台詞の予感。気になって巻き戻して再度再生しましたが、「sea」の先が聞き取れなかったのでその部分のセリフを検索したところ「jump in the sea and drown」と言っていることが判りました。 日本語に訳すと「海に飛び込んで溺れた方がまし」そんなところでしょうか。下に原文を載せておきます。

Kev:
I don't give a monkey's arsehole about Mods and Rockers.
Underneath, we're all the same, 'n't we?

Jimmy:
No, Kev, that's it. Look, I don't wanna be the same as everybody else. That's why I'm a Mod, see?
I mean, you gotta be somebody, ain't ya, or you might as well jump in the sea and drown.



お気付きでしょうか。
この台詞が衝撃のラストシーンに繋がる伏線だということに。

この作品の“肝”ともいえる台詞がこのような形で隠されていたのには驚きました。これが判ったからといってストーリーも感想も変わることはありませんが、作り手が考えたものを、このような形で映画作品としての魅力が伝えられないことは残念なことです。それでも公開から33年が経ったこの映画が、今も尚世代を超えたて多くの人々に見続けられることによって、新たな発見や解釈が生まれる可能性があることは本当に素晴らしいことだと思います。


続く
by modthing | 2012-12-30 23:49 | MODS

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