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モッズシーンから見たアシッドジャズ誕生までの流れ<後編>

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エディ・ピラーとその多くの仲間達がモッズシーンを去った1986年、一方のジャズシーンでは映画「アブソリュート・ビギナーズ」の公開前夜にあり、その期待の高まりとともにこれまで以上の盛り上がりを見せていました。この作品(同名の原作小説はコリン・マキネス著/1959年)は、1958年のロンドン・ソーホーを舞台にジャズと踊りに明けくれる若者(モダニスト)たちの群像を描いた物語ですが、ジャズダンサーズのIDJが出演するなど、彼らのシーンが映画にも反映されておりメディアからも注目を集めていました。1979年、モッドリヴァイヴァルの最中に公開された60年代のオリジナルモッズを描いた映画「さらば青春の光」のような"成功"を制作者は目論むのですが...。




■86年4月

ついに「アブソリュート・ビギナーズ」が公開されます。監督はセックスピストルズの映画「Great Rock'n'Roll Swindle」を手がけたジュリアン・テンプル。そして衣装は「さらば青春の光」でもお馴染みのジョイス・ストーンマン。

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absolute beginners


ジャズとモッズ、両シーンに繋がりがあるソーホーのクラブ、ザ・ワグを経営するクリス・サリヴァンがこの映画のエキストラの手配をしたことで、前述のIDJをはじめとするジャズシーンのダンサー達は勿論、モッズシーンからもエキストラ出演があったといいます。このクラブでは格好悪い客が入場できなかったため(通りがかりの客がふらっと入れるような雰囲気ではなかった)、エキストラの質はなかなか良かったんじゃないでしょうか。

実際に「映画の中で格好いい人がいたなら、その人の服は自前で用意したものと思って間違いない」と語るモッズシーンからエキストラ出演した女性は、ミントコンディションのランブレッタ1型を所有し、卒論のテーマはコリン・マキネスの3部作(アブソリュート・ビギナーズは2作目にあたる)だったという筋金入りのモデットでした。原作の主人公がモダニストの起源だとされることは当時のモッズシーンでも知られており、彼女をはじめとする一部のモッズもこの映画に対して注目をしていました。

また、ワーキング・ウィークのサイモン・ブースによれば当初キース・リチャードも出演する予定だったといいます。キースをザ・ワグに連れて行きジャズダンサーのIDJを見せたところ、非常に気に入り、なかでもダンサーの一人がキースに対して言った「クリフ・リチャードの兄弟かい?」という、まるで世間と隔離されたようなシーンをそのまま体現したかのようなセリフに大変喜んだというエピソードがあります。

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I.D.J


キースの出演はなくなりましたが制作の出だしは順調でした。しかし、ほどなくして資金調達の遅れが原因でアメリカの資本が参入します。その関係で"内容をもっとポップなものにしろ"等の指示があり、内容の修正を余儀なくされます。その結果、ノスタルジックなものにしたかったのか、現代的なものにしたかったのか方針がよく定まらないまま、中途半端な作品に仕上がりました。シーンの人々の期待が高かっただけに(勿論最初から期待していない人も多かった)、この出来上がった作品に多くの人々はがっかりさせられました。




■86年5月

ジャズシーンを牽引していたポール・マーフィーはバズ・フェ・ジャズらとともに、ザ・エレクトリック・ボールルームで全く新しいイベントを始めます。リズム&ブルース、ブルーノートスタイルのバップ、ジャンプ、ジャイヴ、ビッグバンド、スウィングまでが流れるパープル・ピットと名付けられたそのパーティーには、モッズシーンからハイクラスの人々が集まり常に店の前にはスクーターが並んでいたといいます。

またその頃、既にモッズシーンではエディなど先進的なDJが、ジミー・スミスの「the Cat」からマイルス・デイヴィス「So What」といった完全なジャズまでをプレイする実験が行なわれており、両シーンの融合は既に始まっていました。

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Paul Murphy JAZZ CLUB FOR beginners LP
この頃に制作された日本向けのコンピレーションがこちら。
もちろん選曲はポール・マーフィーによるもの(クレジットはブログ末にあります)。



ちょうどその前年、シリアスになりすぎていたジャズシーンのバランスを取る目的で、ジャイルス・ピーターソンとクリス・バングスがオープンしたてのロイヤル・オークでスペシャル・ブランチというパーティーを始めます。バップに変わって60年代のプレスティッジに代表されるようなオルガンサウンドが流れるのが特徴で、ここにエディ・ピラー率いるモッズシーンが初めて接触します。発端は海賊放送でジャイルスがかけたヤング・ホルト・アンリミテッドの「Wack Wack」をエディが聞き、彼のイベントに足を運んだことでした。スペシャルブ・ランチにはジミー・スミスやブラザー・ジャック・マクダフといったジャズからソウル、さらにはブーガルーまで彼らが必要とする音楽の全てがありました。

エディーは「こここそが俺たちの場所だ。モッズでありながらも音楽を追究できる。これこそモッドのあるべき姿だ」と考え、次第に客の半数がモッドコネクションで占めるようになります。ジャズシーンもモッズシーンも音楽のルーツは同じでした。86年にはスペシャルブランチシーンの一部となり、87年にはそこのDJになっていきます。




■86年9月

86年9月からジャイルス・ピーターソンの「BBC Radio London : Mad on Jazz」が始まります。これがジャイルスにとって初となる正規(それまでの海賊放送ではない)のラジオプログラムになります。昨年、BBC RADIOとジャイルスの関係が25年になるのを記念して当時のラジオ音源がアップされました。

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Gilles Peterson "Mad on Jazz"
こちらのリンクから視聴、DLできます。
http://muchosoul.podomatic.com/entry/2011-09-08T16_32_18-07_00


特にこの前半部分なんかはモッド好みといえますし、また後半にかけてのブラジリアン他の選曲は当時のジャズシーンで流れる音楽の幅が広かったことがわかります。ちなみにこのラジオを始める経緯というのが、海賊放送をしていたジャイルスにBBC側から「うちで番組をやらないか?」と持ちかけて来たというのだから、なかなか面白いエピソードですよね。




■アシッドジャズの誕生

長くなりましたが、ここでアシッドジャズが生まれたエピソードを紹介します。この証言は、近年出版されたUKジャズ・ダンス・ヒストリー ~From Jazz Funk & Fusion To Acid Jazz〜に詳しく載ってあります。


アシッド・ジャズのアーティスト、スノウボーイが語源について関係者へインタビューを重ねたところ、1988年2月6日にミドルセックス州ブレントフォードのウォーターマンズ・アーツ・センターで行われたイベント「Special Branch」で、DJのクリス・バングスが、アート・ブレイキーの「The Feast」を選曲した際に、DJブースの背後に設置されたプロジェクターで点滅する「ACID」の文字を見て「アシッド・ジャズ」との言葉を発案したことが分った。また、その場で共にDJプレイをしていたジャイルス・ピーターソンが、マイク・パフォーマンスで「アシッド・ジャズ」と言い放ったことから、エディ・ピラー、サイモン・ブースらの間にその呼称が伝わったとされる。-wikiより-


また上には書かれていませんが、これはアシッドハウスに対するジョークでもありました。このように生まれたアシッドジャズという名称でしたが、それではアシッドジャズという音楽スタイルはどのように生まれたのでしょう?


アシッドジャズの言葉を生み出したクリス・バングスについて語ったケヴィン・ビードルによるインタビューではこのような経緯があったそうです。(1986年、もしくはそれよりも少し前の内容のものと思われますが)少しずつシーンがハードコアな面を失いつつある状況にあり、全員が高速フージョンやアフロキューバンで踊れない状況になっていました。そこで、クリス・バングズはDJでの選曲を、最初はファンク、次にジャズ・ファンク、ファンキー・フュージョンに移り最後にフュージョンをかけるスタイルを取るようになり、それがアシッドジャズのベースになります。クリスの理想は、フロアにどんな人種も関係なく、クロスオーヴァーな雰囲気にするということでした。




■アブソリュート・ビギナーズ公開後

映画「アブソリュート・ビギナーズ」が公開された結果、興味を持った人が続々とやって来ましたが、このジャズシーンはハードコアな場所、6ヶ月もすると彼らはいなくなりました。この映画によってジャズシーンのバブルがはじけ、シーンの規模は収縮し、以後復活することはありませんでした。しかし、クリス・バングズの提唱する理想がアシッドジャズの本拠地となったカムデンのディングウォールズで生まれました。今や伝説として語り継がれている当時の様子を詳しく説明しているものを見つけましたので、こちらに紹介します。


1986年にディングウォールズで毎週日曜日に行なわれるサンデー・アフタヌーン・クラブを始めた。昼から始まり、音楽はジャズ・ダンスミュージックからファンキーなレア・グルーヴまでと幅広く、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ガリアーノ、インコグニートなどといった当時新人のバンドやロイ・エアーズ、デイヴ・パイク、スティーヴ・ウィリアムソンやコートニー・パインなどのジャズ・レジェンドのライブパフォーマンスも積極的に開催していった。アシッド・ハウスと発生期のレイヴ・シーンに火がつく頃、時を同じくしてジャイルスのサンデー・セッションも多くの人を集めた。ジャイルスはアシッド・ジャズ・クラバーとUKクラブカルチャーのジャズ・ファンクやヒップホップのルーツを忠実に支持している人達とのギャップを埋める役割を果たしたといっても過言ではない。-UNIVERSAL MUSIC JAPANより-

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SUNDAY AFTERNOON AT DINGWALLS -classic moves and grooves from the legendary club-



2006年にジャイルス・ピーターソンとパトリック・フォージにより、当時を熱狂を再現した2枚組のコンピレーションが発売されました。その名も「SUNDAY AFTERNOON AT DINGWALLS -classic moves and grooves from the legendary club-」。そのライナーテキストには、会場に集まる人々んぶついて次のように書かれています。

ハードコアなジャズダンサーズ、アシッドテッズ、プログレッシブモッズ、ブギーボーイズ、ヘッドノッダーズ、ビートニクス&プロトビートヘッズなど、様々な人種が一つのフロアに集う。まるでメルティングポットだった。

このプログレッシブモッズという言葉、引っかかりませんか?初めてこの言葉を目にした時、何かの本でモッズには「Open Minded」の姿勢が必要だ、と書かれていたことを思い出しました。モッドシーンからブロウンアウトしたガイ・ジョセフは当時、アディダスのスタンスミス(復刻前)に山高帽といった格好で遊んでいたと言います。そうした光景を見て、その時代、その場所で発生した最新の音楽を通して遊んでいたモッドをそのように言い表したのでしょう。



■アシッドジャズレコーズ誕生

アシッドジャズという言葉が誕生した翌年、ジャイルズのバックグラウンドのジャズとレアグルーブ、ソウルに、エディのモッドを掛け合わせ、アシッドジャズレコーズが誕生します。記念すべきレーベル1stシングルは合計で2万枚も売れたというガリアーノの「Frederic Lies Still」。

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Frederic Lies Still / Galliano



「ガリアーノのデビュー曲は、カーティスメイフィールドの曲に詩を被せた「Frederic Lies Still」。モッド的なアイデアだろう?オープンで柔軟な姿勢を持つモッズなら、新しいジャズシーンにはすんなりと受け入れることができたんだ」


そう語るエディはそれから25年後、そのレコードと似たような手法でベンシャーマンのストアの階上にアシッドジャズレコードストアをオープンさせました。(完)


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ACID JAZZ VINYL STORE











ということで、ジャズシーンにどのようなタイミングでモッズシーンが接触し、アシッドジャズが誕生したかを書いてきましたがいかがでしたでしょうか?

この話のようなアシッドジャズ誕生前夜のような体験ができるかもしれないフェスティバル【名古屋クラブジャズフェスティバル2013】が土曜日に開催するのは皆さんもうご存知ですよね?

我々モッズシーンから我々ダンスクレイズも出演するので、皆さん是非、できればモッズシーンに属していることがわかるようなスタイルで遊びに来て下さい!


お得な前売りチケット

①当日券よりも1,000円お得
②3月1日金曜日開催のアフターパーティーに半券持参で無料でご招待致します。
※ドリンク代500円必要です。


は大須ブルードレスやチケットぴあでも取り扱っていますので、どうぞお気軽にお買い求めください。





NAGOYA CLUB JAZZ FESTIVAL 2013





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名古屋クラブジャズフェスティバル2013
http://www.facebook.com/pages/NAGOYA-CLUB-JAZZ-FESTIVAL/313686328648930


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NAGOYA MODS
http://www.facebook.com/NagoyaMods






■Paul Murphy JAZZ CLUB FOR beginners

Oscar Brown Jr - Work Song
Art Blakey - Cubano Chant
Dave Brubeck - Unsquare Dance
Duke Ellington & His Orchestra - Kinda Dukish/ Rockin In Rhythm
Little Johnny Griffin - Flyin' Home
Kenny Burrell - The Switch
Duke Ellington & His Orchestra - Hello Little Girl
Charles Mingus - Boogie Stop Shuffle
Count Basie & Duke Ellington - Wild Man
Cab Calloway - Minnie The Moocher
Lonnie Smith - Hola Muneca
Aretha Franklin - Muddy Water
Miles Davis - So What


■SUNDAY AFTERNOON AT DINGWALLS -classic moves and grooves from the legendary club-
Disc 1
1. Weekend - View From Her Room
2. Dave Valentin - Clove And Cinnamon
3. Dom Um Romao - Shake (Ginga Gingou)
4. Bobby Montez - Kom Tiki
5. Byron Morris - Kitty Bey
6. Airto - Encounter (Encontro No Bar)
7. Michel Legrand - Southern Routes
8. Pharoah Sanders - Origin
9. Mark Murphy - Empty Faces
10. Webster Lewis - Barbara Ann
11. Janet Lawson Quintet - Sunday Afternoon

Disc 2
1. Leroy Hutson - Cool Out
2. A Tribe Called Quest - Luck Of Lucien
3. Willis Jackson - Nuther'n Like Thuther'n
4. Stone Alliance - Sweetie Pie
5. Soul Tornadoes - Hot Pants Breakdown
6. Larry Young's Fuel - Fuel For The Fire
7. Roy Ayers Ubiquity - He's A Superstar
8. Norman Connors - Captain Conners
9. Corkey McClerkin - Searchin For The Soul
10. Jean Luc Ponty - In The Fast Lane
11. Soul II Soul - Fairplay
12. Mica Paris - I Should've Known Better
13. Elsie Mae - Do You Really Want To Rescue Me?
14. Ricardo Marrero - Feel Like Making Love
15. Roy Haynes - Dorian
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by modthing | 2013-01-29 21:16 | MODS
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